三十年戦争 400年企画

『イサック』と「プファルツ遠征」/その舞台と登場人物

『イサック』と「プファルツ遠征」/その舞台と登場人物 (ことよ)

「アフタヌーン」(講談社)で連載中の歴史漫画『イサック』。第1巻冒頭に「1620年9月 ドイツ南西部プファルツ選帝侯領」と時代と場所が明記してあり、三十年戦争初期の「ボヘミア・プファルツ戦争(1618-1624)」、その中でもとくに「プファルツ遠征(1620-1623)」の序盤を舞台にしていることがわかります。

2018年11月現在第5巻まで出ていますが、公式の内容紹介(あらすじ)は以下のとおり。

  1. 2つの勢力に別れ、後に30年戦争と呼ばれる激しい戦いの最中にあった17世紀の神聖ローマ帝国。そこに傭兵として現れたのは「イサック」と名乗る日本人の男! 遠く日本を離れ、ヨーロッパ大陸までやってきたイサックの目的とは!? 彼の壮絶な戦いが始まる!! 
  2. 後に「三十年戦争」と呼ばれる戦いを繰り広げる17世紀の神聖ローマ帝国。落城寸前のフックスブルク城にたった一人の援軍として現れた「イサック」と名乗る傭兵。迫る敵スペインの大軍を日本から携えた火縄銃で撃退する活躍を見せるイサック。だが偵察中にスペイン重装騎兵に急襲され、イサックは一人奮戦する!
  3. 時は1620年。後に「三十年戦争」と呼ばれる戦乱の最中にあった神聖ローマ帝国。落城寸前のフックスブルク城にたった一人の援軍として現れたのは「イサック」と名乗る男だった。彼は遠く日本から仇を追ってヨーロッパへ渡って来たという。イサックは携えた火縄銃でスペインの大軍を二度撃退した。その頃、イサックと似た火縄銃を持つ「ロレンツォ」と名乗る男が敵側に参陣した!
  4. スピノラ軍とロレンツォの猛攻がローゼンハイム市へと迫る! ゼッタが放った銃弾はロレンツォを捉えるのか? 負傷で銃が撃てないイサックは、剣術と知略で戦場を支配する! ローゼンハイム市攻防戦は佳境へと向かう!
  5. フックスブルク城を一気に落とすべく、プリンツ・ハインリッヒを捕えたスピノラ将軍は、プリンツをエサにイサックとロレンツォを罠にかける! ロレンツォと対峙し、そしてスピノラの兵士たちに包囲されたイサックのとった手段とは!? フックスブルク城攻防戦、いよいよ決着!

第一話は「コミックDAYS」で無料で読めます。116ページ。

三十年戦争は西洋史の中でもマイナーな分野に入りますが、その中でも「プファルツ遠征」はさらにマイナーです。連載中の『イサック』が今後どのフェーズまで描くことを想定しているかはわかりませんが、まずは当面の舞台である「プファルツ遠征」に絞ってフィクションとノンフィクションを比較してみました。

史実との比較になるので、主人公イサックや非史実人物については触れません。

「プファルツ遠征」とは

この時代(1620-1623)について、日本語で概説以上に詳細に書かれているのはウェッジウッドの『ドイツ三十年戦争』一択かもしれません。ただし、「プファルツ遠征」の用語自体が、イングランドの義勇軍の参戦から撤退までを指す英語由来の概念なので、「プファルツ遠征」としてまとめて書かれているものはほぼ皆無です。(…なので自分で書きました。長いので興味のある人向け プファルツ遠征(1620-1623) Palatinate Campaign/『金獅子亭』)。

『イサック』では4巻でイングランドの援軍が到着し、5巻で「白山の戦い」に言及されているので、物語の開始から3-4か月しか経っていない計算です。そのため、ここでは「プファルツ遠征」でも前半を扱います(下記年表太字)。

1620年7月から1621年12月までの出来事を時系列にすると以下のとおりです。

  • 1620年7月3日 ウルム条約: 「プロテスタント同盟」の諸侯がその盟主フリードリヒ五世を支援しないことを表明
  • 1620年7月8日 スペイン軍のアンブロジオ・スピノラ将軍が24,000の兵を率いブリュッセルで挙兵
  • 1620年7月22日 イングランド義勇軍2,200がドイツに向けて出航
  • 1620年8月19日 スピノラ将軍、マインツを占領
  • 1620年9月9日 スペイン軍のカルロス・コロマ将軍、クロイツナハを占領
  • 1620年9月14日 スピノラ将軍、オッペンハイムを占領
  • 1620年10月1日 スペイン軍のゴンザロ=フェルナンデス・デ・コルドバ将軍、バッハラッハを占領
  • 1620年10月11日 イングランド軍、ヴォルムスで「プロテスタント同盟」軍と合流
  • 1620年11月8日 「白山の戦い」でフリードリヒ五世軍が壊滅、フリードリヒ五世一家は亡命を強いられる
  • 1621年1月21日 フリードリヒ五世に帝国アハト刑(imperial ban)が下される
  • 1621年3月31日 スペイン国王フェリペ三世死去、フェリペ四世即位
  • 1621年4月9日 スペイン・オランダ間の「十二年休戦条約」失効
  • 1621年4月14日 オランダ連邦議会、フリードリヒ五世一家の亡命受け入れ決定
  • 1621年5月24日 マインツ条約: 「プロテスタント同盟」の解散
  • 1621年7月15日 南ネーデルランド執政アルプレヒト七世死去、妻イザベラの単独統治となる
  • 1621年9月5日 ユーリヒ攻囲戦開始、コルドバ軍をプファルツに残しスピノラ軍はフランドルへ移動
  • 1621年9月 コルドバ将軍、フランケンタール攻囲戦開始

かんたんにまとめると、ボヘミア国王に即位したプファルツ選帝侯フリードリヒ五世に対し、前国王フェルディナント二世(神聖ローマ皇帝)が王位の「簒奪」を唱えたのが事の発端です。フェルディナント二世は、ボヘミアには「カトリック連盟」(とくに選帝侯位への野心のあるバイエルン公)の助力を得てティリー伯らの軍を派遣し、フリードリヒ五世の本国プファルツにはスペイン(とくにオランダとの休戦明け寸前の南ネーデルランド執政府)の助力を得てスピノラ候らの軍を侵攻させました。

フリードリヒ五世の側は、周辺諸国の外交的な思惑が自分に味方しなかったこと、何より本人も若くて未熟ということもあり、この二正面作戦のいずれにも期待した支援がほとんど得られずに政治的・軍事的に孤立します。フェルディナント二世の側が「連盟」をがっちり掴んだのに比べ、「同盟」にほぼ見捨てられたかたちとなったのがとくに大きいでしょう。『イサック』ではその二正面のうち片方、プファルツでの攻防が舞台となります。

17世紀前半当時のスペインの軍隊は、ヨーロッパ最強と言って良いほど質も数も強大です。『イサック』でプファルツの要塞が当初からいきなり絶望的な状況にあるのは、このような経緯によるものです。

『イサック』の史実またはそれっぽい登場人物(登場順)

2018年4月16日付の「日経トレンディネット」では、原作者の真刈信二氏がフィクションをつくるときのコツについて「嘘を史実や学術的な話などの事実で固めること」語っていますが、『イサック』に描かれる史実人物は今のところスピノラ兄弟とヴェア将軍くらい(名前だけならもっといますが)で、あとはいかにも史実っぽい架空人物です。なのでここでは、初見で史実?架空?と迷う(かもしれない)人物を挙げてみました。なお、将軍の副官たちはいい感じのキャラクターばかりなのですが、いずれも架空なので割愛しています。史実ではない人物には★をつけています。画像はできるだけ1620-21年に近いものを選びました。

オラニエン公

PORTRAIT OF PRINCE MAURITS OF ORANGE (1567-1625)

オランイェ公マウリッツ。オランダの指導者。名前しか出てきませんが、主人公のイサックが日本から最初に流れ着いたオランダでイサックを雇い、さらにその仇討ちの旅に快く送り出したようです。(なのでイサックはオランダ語を話す。プファルツではちょっと訛ってるかなくらいで通じるらしい)。今後も名前のみで本人は出てこないと思われます。イサックは最初、マウリッツの軍旗と書簡を持って、たった一人でプファルツに現れます。

プリンツ・ハインリッヒ★

ハインリッヒ・フォン・ヴィッテルスバッハ。プファルツ選帝侯フリードリヒ五世の妾腹の弟で、本人の言によると召使だった母親は存命で宮廷にいるらしいです。史実ではフリードリヒ五世の成人した弟はルートヴィヒ=フィリップただ一人で、この時期は兄フリードリヒに従ってボヘミアにいるはずなので、留守宅を守る人物として非常においしい設定。線の細いイケメンに見えますが、自ら斥候も突撃も剣闘もこなすパワー型司令官で、「ハインリッヒ様は生まれながら最高の戦士だぜ」と言われるほど兵からの支持は絶大です。「私は兵士の間に立って戦うように運命づけられているのだ」とはいかにもカルヴァン派らしい台詞。副官のオットーも架空人物。

プファルツ選帝侯フリードリヒ五世

Portret van Frederick V (1596-1632), Keurvorst van de Palts Rijksmuseum SK-A-675

まだ名前のみの登場。5巻にしてはじめて「白山の戦い」の敗戦後に逃げたと報告されます。プリンツ・ハインリッヒ自身は兄を助けるためには命も厭いませんが、彼の副官オットーが「いかに選帝侯である兄君の命とは言え…」とそれを諫めているのを見るに、もしかしたら周りからは兄から無茶を押し付けられているように見えるのかもしれません。

アンブロジオ・スピノラ将軍(城攻めの悪魔)

Peter Paul Rubens - Portrait of the Marchese Ambrogio Spinola

ロス=バルバセス侯アンブロジオ・スピノラ。半年給与が支払われなくても略奪をしないほど、傭兵たちから人望があるとされます。プリンツ・ハインリッヒに「イタリア人だ 財力はない」と言い切られちゃっているので、この頃はかなり困窮していることが周りにも伝わっているようです。第1巻で主人公イサックに撃たれていきなり戦死します(ネタバレ)。というわけで本作内では、第1話に本人が登場し台詞もあるものの、どちらかといえば偶像としての役割ですね。2巻以降は弟のフェデリコがアンブロジオを名乗りますが、フェデリコは兄の「常に正攻法」なやり方に批判的なので、今後どのような「アンブロジオ・スピノラ」になっていくか、というのも見どころになります。

王太子アルフォンソ★

スペイン国王フェリペ三世には成人した王子は3人。史実の「アルフォンソ」名の王子は夭折した五男ですが、ここでは「王太子」となっているので、フェリペ(後の四世)より年上のはずです。フェリペ四世の即位は1621年3月31日。…というわけで、登場即、近いうちに絶対死ぬと分かってしまう役どころです。プリンツ・ハインリッヒ曰く「怯懦でプライドが高い」ですが、食えない一面が多々あり、短い登場期間の間にもいろいろやってくれます。スピノラを「復活」させたのもこの人のアイデア。また、本人は近い未来に自分がスペイン国王に即位するときには、同時に神聖ローマ皇帝にも即位し(その時フェルディナント二世をどうするつもりだったのかはわかりませんが)、ヨーロッパから戦争を失くす、という壮大なビジョンを持っていました。側近のロドリゴや甲冑割りのヴィトリア公爵は架空人物。

フェデリコ・スピノラ将軍☆

Federico-Spinola

亡霊(?)みたいなものなので、星を☆にしました。アンブロジオ・スピノラ将軍の実弟フェデリコ・スピノラ提督は1603年のスライスの海戦で戦死していますが、本作ではご健在。それどころか、アルフォンソ王太子の策略によって、戦死したアンブロジオを名乗らされ、旧スピノラ隊を率います。兄アンブロジオが規律と人望で軍を動かしたのとは逆に、兵の欲望を利用し、「恐怖と裏切り」をなんとも思わない人物に描かれます。最初はやや小物感が否めない人物描写でしたが、話が進むにつれ見事な撤退戦を見せるなど、どんどん能力が開花していく感じですね。副官のロベルト・ディアスやその配下のトスカナ騎士セルジオ・オルシーニも架空人物です。

長谷川藤広

徳川家康の側近で、長崎奉行として海外との貿易やキリシタン弾圧に携わりました。当作では、イサック(猪左久)の師である鉄砲鍛冶芝草佐平(架空人物)が仕上げ、家康に献上することになっていた二挺の鉄砲を検分に来ます。物語の発端となったこの出来事は大阪夏の陣の1ヶ月前の1615年4月です。その後イサックはロレンツォ(錬蔵)を追ってヨーロッパに渡りますが、家康の死は1616年6月1日、藤広の死は1617年11月24日で、イサックがプファルツに来た時点で既に2人とも亡くなっている計算になります。

ホーレイス・ヴェア将軍

Sir Horace Vere - Horatius Veer (1565-1635)

ホレス・ヴィアー将軍。イングランドからの援軍を指揮する司令官。4巻現在ではまだ1ページしか出ていないので今後も関わってくるかは不透明ですが、せっかくなので主人公たちと共同作戦を演じてほしいところ(無理かなあ)。オランダ八十年戦争で30年に渡る経験を積み、この時点で還暦手前。指揮能力の高さ、忠誠心の篤さ、人柄の良さを兼ね備えていて、その戦歴からとくに攻城戦を得意としています。なお本作では彼の率いるイングランド兵は3000とありますが、実際の兵員数は2200です。

イギリス王ジェームス

James I of England by Daniel Mytens in 1621

イングランド国王ジェームス一世。フリードリヒ五世の舅(義父)です。プリンツ・ハインリッヒは国王が「兄の援軍要請に答えたのだ」と喜んでいますが、実際はイングランド軍は志願兵による義勇軍で、国王は彼らに遠征の許可を出したに過ぎません。ヴェア将軍が「臣下が駆け付けるのは当然」と言っているのも、そんな背景をやんわり表しているのでしょうか。今後も名前のみで本人は出てこないと思われます。

フォン・ハラハ伯爵

Karl Graf von Harrach

ローラウおよびピュルヒェンシュタイン伯カール・フォン・ハラハ。名前のみ。何故かプリンツ・ハインリッヒの母親を通じて、プリンツに和解の仲介を申し出てきています…と見せかけ、実はやって来たのは三男のエルンスト・アーダルベルト。カールはオットーの説明台詞どおり、「皇帝側近でウィーン宮廷の最有力者」。皇帝マティアスの時代からの宮廷顧問官で、三十年戦争に先立つウスコク戦争の終戦条約にも関わり、フェルディナント二世の皇帝選出にも尽力したため皇帝に最も影響力があると言われました。三男によれば、プロテスタントには耳を貸さない、ウィーンの権謀にしか興味がない人物とのこと。後には、ヴァレンシュタインとその従兄弟に娘の2人を嫁がせています。

エリザベート・フォン・クラーエンシュタイン★

プファルツ選帝侯兄弟の従姉妹の女男爵。武勇に優れていると教皇庁でも噂らしい。バイエルン公と同格…かどうかは置いといて、帝国諸侯の身分です。女性ながらきちんと戦士体形してるのも好感が持てます。ドイツ語の子供向け小説?で「クラーエンシュタインの騎士」というのがあるので、そこらへんが元ネタでしょうか。

フォン・ハラハ枢機卿

Kardinal Ernst Adalbert, Reichsgraf von Harrach (zu Rohrau)

上記のとおりハラハ伯爵の三男エルンスト・アーダルベルト・フォン・ハラハ。ほぼ史実どおりの人物描写で、この時点ではプロテスタントに同情的な人物として描かれます。教皇グレゴリウス15世の側近であり、プラハ大司教に推挙されている、というのも史実どおりです。物語内での役割は、ボヘミアを含めた世界情勢の説明役で、彼の口から初めて「妹の婚約者」としてヴァレンシュタインの名前も出ました。彼の登場がきっかけで、次舞台は遠くブランデンブルクになりそうです。

アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン

Albrecht von Wallenstein

5巻の最後で名前のみ。5巻にしてようやく、教科書太字人物の登場です。プリンツやフォン・ハラハ枢機卿の噂話で、皇帝軍の強力な将軍であるということと、現在北のブランデンブルクに向かっているようだという情報が語られます。

『イサック』の地名(登場順)

map

地図へのリンク

『イサック』では、架空の人物が相当割合混ざっているせいか、地名に関しても敢えて架空にしてあると思われる場所が多いです。上記年表と関係する地名を地図にプロットしました。以下には、作品内に出てくる地名を登場順に挙げ、実在の街のどこにあたるかを推測してみました。架空の地名には★をつけています。

フックスブルク城★

オランダ・ボヘミア・スペイン街道の三叉路に当たる交通の要所。フックスブルクを検索すると同名の地名がありますが、条件が一致しないため、架空の地名と判断します。モデルは、オッペンハイム(地図8)かフランケンタールか悩みますが、作品中ではライン川の右岸に描かれているので、この2つの街以外かもしれません。

リージュ要塞★

スピノラの強さの例としてプリンツ・ハインリッヒが「フランドルの要衝を3日で落とした」と挙げた地名。「リエージュ」は司教領のためこの場合はあてはまりません。「リンゲン」を含む1605-1606年の「スピノラの遠征」はもっと北のオランダ(ヘルデルラント、オーフェルエイセル)やドイツ(ノルトライン=ヴェストファーレン)のことなので、これも架空の地名と考えられます。

グリュンフェルト★

アルフォンソ王太子率いるスペイン軍が駐留する場所。ここからマインツ街道あるいはホウバー渓谷を抜けてフックスブルク城に進軍してきます。ちょい役的な架空の地名と思われます。

ホウバー渓谷★

単純にライン渓谷のことかと思われます。タウバー渓谷というのがコブレンツの近くにありますが、少し距離が離れているので違うかなと。

ローゼンハイム★

フックスブルク城を支援する自由都市。ローゼンハイムを検索すると、ナッサウ伯領内やミュンヘン~ザルツブルク間に同名の街がありますが、いずれも条件が一致しないため、架空の地名と判断します。フックスブルクの守備兵たちの家族も多くがここにいるとのこと。それなりに大きな街のようなので、マンハイム(地図12)がモデルでは…と考えていますが、帝国都市(17世紀時点では違いますが)つながりではオッペンハイム(地図8)かもしれません。

マインツ

Meintz (Merian) 001

プファルツ遠征において、スピノラ軍が占領し拠点にしている街(地図6)。本作内でも、アンブロジオ・スピノラ将軍を亡くした軍隊が駐留している場所とされており、史実どおりと考えて良さそうです。

ラーベンドルフ★

ローゼンハイムとヘッセンを結ぶ街道沿いにある宿場町とのこと。ラーベンドルフを検索すると同名の地名はオーストリアにしかないので、架空の地名と判断します。ちょい役的な街。

フランクフルト

FfM-AnsichtVonSudewesten-1612-19(AusschnittSachsenhausen)

本作ではホーレイス・ヴェア将軍が駐留していた街で、ここからローゼンハイムに進軍してくることになっています(地図2)。が、史実のプファルツ遠征ではヴェア将軍がいったん落ち着いたのはヴォルムスで、フランクフルトは遠征の最初と最後に立ち寄った程度の場所です。ただ、仮にローゼンハイムをマンハイムとすると、ヴォルムスでは近すぎるので、フランクフルトになった可能性はあります。

フロッシェンドルフ★

スペインに帰国しようとするアルフォンソ王太子が、ロレンツォと落ち合うことにしたスペイン街道沿いの街とのこと。フロッシェンドルフを検索すると同名の地名はオーストリアにしかないので、架空の地名と判断します。

アーレン

Aalen 1730

自由都市アーレン(Wikipediaには、帝国都市なので自由都市と間違わないでね、と書いてありますが…)。ヴュルテンベルク州にある、シュヴァーベン帝国クライス内都市です。1620年時点で街はルター派です。

クラーエンシュタイン城★

アーレンの近くにある飛び地の城とのこと。クラーエンシュタインを検索すると同名の地名はハイデルベルクより西のプファルツ領内で、バイエルンとは逆側なので、バイエルン領内とするなら架空の地名と判断します。


それにしても、第1巻だけでも、圧巻の見開きのテルシオ、それが斜めに槍を構えたシーン、そしてホウバー渓谷の景色など、絵としても漫画という以上に非常に美しい描写が満載です。本編の進行にしたがって、この記事も追記していこうと思います。

  • 5/5 初回投稿
  • 7/29 追記
  • 11/22 追記